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シイ企画 > 波乱万丈な薬剤師人生

波乱万丈! 新たなる道、臨床開発編6

海外で使用されていた容量(100mg/日?300mg/日)をベースとしてフェーズI試験が実施されたのですが、最小容量として実際に使われる容量の半分の容量から試験が始まり、安全性の評価を行いました。
前期フェーズII試験ではフェーズIで使った半分容量の薬剤の投与から始まり増量しながら治療を行っていく試験で50mg/日2回投与で1回25mgからスタートし、100mg/日、150mg/日、200mg/日と増量し300mg/日まで増量できる試験でしたがほとんどの症例が50mgから200mgで効果があり、臨床容量としては50mg/日?150mg/日となりました。もともと最少容量は50mgの錠剤を予定していたのが25mg製剤を使うことになり大変小さい錠剤になってしまいました。

前期第II相試験が始まる前にこの薬剤の持っている特性と開発の目的を明確にするためにも開発全体の総括医師として北里大学の精神科の先生になって頂き、精神科でのうつ病、うつ状態。心療内科中心のうつ病、うつ状態。強迫性障害の3つを大きな柱として取り組み、それぞれの試験で総括医師をお願いしました。それぞれが第II相試験、第?相試験(二重盲検比較試験)を行いそれぞれで対象薬(又はプラセボ)と比較して本剤の有用性が認められました。

当時臨床試験がフェーズIIから、フェーズ?にかかる頃、臨床開発試験のグローバル化がささやかれるとともに臨床試験の質を高めることを目的としてGCP(Good clinical practice)が1990年に通達が出され1997年に施行されました。現在は新GCPの下、企業中心の臨床開発に変わっていますが、以前の旧GCPでは臨床の先生中心の試験であり、まだまだ浸透し徹底されるには時間がかかる時期でもありました。
社内ではGCPの施行を前提に通達が出されるとともに取り組みが大きく変わって行きましたが、抗生剤中心のグループとその他の薬剤で大きく2分されており、対象となる先生や組織が違う事もあり、社内での考えや取り組みにも違いがありました。

当時、以前にも書きましたが大学時代の私の同級生が厚生省の審査課に課長補佐で居られましたので、プライベートのお付き合いの中でご指導頂くことが多くありましたが、それを社内で理解してもらおうと、機会あることに話しましたが、周りの社員は抗生剤中心に長く臨床開発を手掛けてきた人が多く、開発の素人が何を言っている、そんな理想ばかり言っても開発はできない。もっと現実を踏まえ、会社が求めるものに注力をしないといけない。そのような指導が降りかかってきていました。

私を中心としたプロジェクトチームは他社との共同開発でもあり、少人数のチームでしたが新卒の若手と他社から途中入社のスタッフで構成され、上司にも恵まれていた事もあり試験当初は自分の考えを全うすることが出来ました。
しかし第II相試験が終わり、第?相試験にかかり、この薬剤が評価され社会に出るように社内で期待されるようになると、目に見えない処で、いろいろな変化、思惑が発生してきました。

1つの薬剤が評価されて薬価収載され、世に出ると、薬剤によっては50億、100億、場合には数百億の売り上げになることもありました。この薬剤も、売り出されば2社トータルでは百億を超すような売上予測でした。抗精神薬はあまり、華々しく評価されることは少ないのですが、国内で初めてのSSRIとして多くの先生方からも評価高いものでした。

1つの新薬が会社へ及ぼす影響は計り知れないものです。その薬剤が大きく評価されることで会社全体が成長し、また1つの薬剤を失うことで大きく下降してしまう、それほど、会社にとって新薬の開発は影響が大きく、重要であります。
何事もそうですが、まだ見えないときは周りの評価は低く、逆に自分の思いを実現できるのですが、だんだん見えてくると、俺が、俺がと人が集まってくる。そのような事がこの薬剤に、社内で起こってきました。開発が終わるとその薬剤は営業に移され、営業の力にかかってきます。

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